世界の貧困をなくすための国際目標：SDGs目標1入門
貧困は世界共通の課題
貧困は、特定の国や地域だけが直面する問題ではなく、国境を越えて互いに関連し合う複雑な地球規模の課題です。この深刻な問題に対処するため、国際社会は共通の目標を設定し、協力して解決を目指しています。
特に、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核をなす持続可能な開発目標（SDGs）は、貧困問題に対する国際的な取り組みの重要な羅針盤となっています。SDGsは、2030年までに達成を目指す17の目標と、それらを具体化した169のターゲットから構成されており、貧困の撲滅を最も優先すべき課題の一つとして位置づけています。
SDGs目標1「貧困をなくそう」とは
SDGsの最初の目標である目標1「貧困をなくそう」は、「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」ことを目指しています。これは、単に「貧しい人をなくす」というだけでなく、貧困を様々な側面から捉え、その根本的な解決を図ろうとする強い意志を表しています。
目標1には、いくつかの具体的なターゲットが設定されていますが、主な内容は以下の通りです。
- 極度の貧困の撲滅: 現在、「極度の貧困」は、1日あたり1.90ドル（購買力平価）未満で生活する人々と定義されています。目標1は、この極度の貧困状態にある人々を2030年までにゼロにすることを目指しています。
- 各国における貧困の削減: 国の状況に応じた定義に基づき、貧困状態にある人々の割合を大幅に削減することを目指します。日本では、相対的貧困率の改善などがこれに該当すると考えられます。
- 社会保障制度の整備: 貧困層や脆弱な立場にある人々を含む全ての人々が、適切な社会保護制度や支援を受けられるようにすることを目指します。
- 基本的なサービスへのアクセス確保: 貧困層を含む全ての人々が、土地やその他の生産資源、金融サービス、基礎的なサービス（医療、教育など）を利用できるようにすることを目指します。
- 災害などに対するレジリエンス強化: 貧困層や脆弱な立場にある人々が、気候変動に関連した災害やその他の経済的、社会的、環境的なショックや災害に対する脆弱性を軽減し、回復力を高められるようにすることを目指します。
これらのターゲットは、貧困が単なる所得の低さだけでなく、食料、水、教育、医療、住居、社会的な排除など、多様な側面に影響を与える多次元的な問題であることを反映しています。
なぜSDGsで貧困撲滅が最優先されるのか
SDGsの17の目標は互いに関連しており、貧困は他の多くの課題の根本原因あるいは悪化要因となり得ます。例えば、貧困は適切な栄養や医療へのアクセスを妨げ（目標2, 3）、教育機会を奪い（目標4）、ジェンダー不平等を深刻化させ（目標5）、安全な水や衛生設備を利用できなくする（目標6）可能性があります。
また、貧困は不平等や不安定を招き、平和で公正な社会の実現（目標16）や、持続可能な都市やコミュニティづくり（目標11）の妨げにもなり得ます。
このように、貧困問題を解決することは、SDGs全体の達成に向けた土台となるため、目標1が最初に掲げられ、最重要課題の一つとして位置づけられているのです。
目標達成に向けた国際社会の取り組み
SDGs目標1の達成に向けて、様々な主体が連携して取り組んでいます。
- 各国政府: 自国の貧困削減政策を策定・実施します。例えば、社会保障制度の拡充、教育や医療への投資、雇用創出、インフラ整備などです。
- 国際機関: 国連開発計画（UNDP）や世界銀行などは、開発途上国への資金援助や技術支援、政策アドバイスなどを行います。また、貧困に関するデータの収集・分析を通じて、課題の特定や進捗のモニタリングを行います。
- 市民社会（NGO/NPO）: 草の根レベルでの支援活動、啓発活動、政策提言などを行います。例えば、教育支援、医療サービスの提供、自立支援プログラムの実施などです。
- 民間セクター: 貧困層を対象としたビジネスモデルの構築（BOPビジネス）、フェアトレード、倫理的な調達などを通じて、雇用創出や所得向上に貢献します。
これらの主体が、それぞれの役割を果たしつつ連携を強化することが、目標1達成には不可欠です。
まとめ
SDGs目標1「貧困をなくそう」は、世界のあらゆる場所であらゆる形態の貧困を撲滅することを目指す国際社会共通の目標です。極度の貧困撲滅だけでなく、各国の貧困削減、社会保障、基礎的サービスへのアクセス、災害へのレジリエンス強化など、多岐にわたるターゲットを含んでいます。
貧困は他の多くの開発課題とも密接に関連しており、SDGs全体の達成に向けた出発点となります。この重要な目標の達成には、各国政府、国際機関、市民社会、民間セクターなど、様々な主体が協力して取り組むことが求められています。SDGs目標1について理解を深めることは、世界の貧困問題の解決に向けた国際的な取り組みを知る上での第一歩と言えるでしょう。