貧困とジェンダー なぜ女性が貧困になりやすいのか
貧困問題におけるジェンダーの視点
世界の貧困問題を考える上で、ジェンダーの視点は非常に重要です。ジェンダーとは、生物学的な性別だけでなく、社会的に作られた性別による役割、期待、機会の違いを指します。残念ながら、多くの国でジェンダーに基づく不平等が存在し、これが貧困の構造と深く関わっています。
この章では、なぜ女性が貧困の影響をより受けやすいのか、その背景にある構造的な問題について解説します。
なぜ女性が貧困の影響を受けやすいのか
世界中で、女性は男性に比べて貧困状態に陥りやすい傾向があります。これには複数の要因が複合的に影響しています。
1. 教育機会の不均等
多くの開発途上国において、女子は男子に比べて学校に通う機会が少ない傾向にあります。家庭の経済状況が厳しい場合、限られた資源が男子の教育に優先的に充てられたり、女子は家事労働や幼い弟妹の世話を任されたりすることが理由として挙げられます。教育を受けられないことは、将来の安定した仕事に就く機会を奪い、貧困から抜け出すことを困難にします。
2. 雇用機会と賃金格差
たとえ教育を受けても、女性は男性に比べて雇用機会が限られたり、同じ仕事でも賃金が低かったりすることが多くあります。これは、特定の職業が「女性の仕事」「男性の仕事」として社会的に区別されていることや、出産・育児によるキャリアの中断などが影響しています。不安定な雇用や低い賃金は、女性とその家族を貧困のリスクに晒します。
3. 家事・育児・介護の負担
世界中の多くの文化において、女性は家事、育児、高齢者や病人の介護といった無償のケア労働を担う比率が高い傾向があります。これらの労働は経済的な対価が発生しないにも関わらず、多くの時間を費やします。これにより、女性が収入を得るための仕事や、スキルアップのための学習に時間を割くことが難しくなり、経済的な自立を妨げる要因となります。
4. 財産や資産へのアクセス制限
土地の所有権や相続権において、女性が男性よりも不利な立場に置かれている地域があります。また、銀行口座を開設したり、融資を受けたりする際に、女性であることが障壁となるケースも見られます。財産や資産を持てない、あるいはアクセスが制限されることは、経済的な安定を得ることを難しくし、危機が発生した際のセーフティネットも失われます。
5. 紛争や災害時の脆弱性
紛争や自然災害が発生した際、女性は特に脆弱な立場に置かれやすいことがあります。避難生活での安全性の問題、食料や水といった資源へのアクセス困難に加え、性暴力のリスクなども高まります。家族を支える役割を担うことが多い女性が被災することで、一家全体がより深刻な貧困に陥ることも少なくありません。
ジェンダー平等と貧困削減
これらの要因からわかるように、貧困問題は単に経済的な問題であるだけでなく、ジェンダーに基づく不平等という社会的な構造問題と深く結びついています。女性が教育、雇用、財産といった機会に平等にアクセスできるようになることは、女性自身の貧困からの脱却を助けるだけでなく、家族全体の生活向上、ひいてはその地域や国の経済発展にも貢献します。
国際社会が掲げる「持続可能な開発目標（SDGs）」においても、「貧困をなくそう」と「ジェンダー平等を実現しよう」はそれぞれ独立した目標であると同時に、互いに深く関連する目標として位置づけられています。貧困のない世界を目指すためには、ジェンダー平等を同時に推進することが不可欠であると考えられています。
まとめ
貧困問題は、経済的側面に加えて、ジェンダーのような社会的な構造も理解することで、より深く理解できます。特に女性が直面する教育、雇用、財産へのアクセスにおける不平等は、貧困が世代を超えて再生産される要因の一つとなっています。貧困削減に向けた取り組みを進める上では、女性が社会のあらゆる面で男性と同等の機会を得られるようにする「ジェンダー平等」の視点を持つことが、非常に重要になります。