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絶対的貧困と相対的貧困とは? 定義と違いを解説

Tags: 貧困, 絶対的貧困, 相対的貧困, 定義, 国際問題

はじめに

貧困問題について考え始める際、「貧困」という言葉が何を指しているのか、漠然としていると感じる方もいらっしゃるかもしれません。一言で「貧困」と言っても、その捉え方にはいくつかの重要な視点があります。特に、国境を越えた世界の貧困問題や、同じ国内での格差問題を理解する上で欠かせないのが、「絶対的貧困」と「相対的貧困」という二つの異なる定義です。

この二つは、貧困を測る基準が根本的に異なります。それぞれの定義と違いを理解することは、貧困問題の現状を正確に把握し、どのような対策が求められているのかを考えるための第一歩となります。

絶対的貧困とは

絶対的貧困とは、「生命を維持するための最低限の生活水準」すら満たせない状態を指します。具体的には、食料、安全な飲み水、十分な住居、最低限の医療、教育などが手に入らない状況です。

この定義は、世界のどこでも適用できる普遍的な基準に基づいています。例えば、国際機関である世界銀行は、1日に使える金額が特定の基準額(現在の国際貧困ラインは1日2.15ドル)を下回る人々を絶対的貧困の状態にあると定義しています。この基準は、世界の特に開発途上国における貧困の度合いを測るためによく用いられます。

絶対的貧困は、文字通り生きるか死ぬかといった、生存に直結する困難さを伴います。飢餓や病気への脆弱性が高く、子どもたちが学校に通えないなど、将来の可能性が閉ざされてしまう厳しい現実があります。主に経済的に発展途上にある国や地域で深刻な問題となっています。

相対的貧困とは

一方、相対的貧困とは、「その社会の一般的な生活水準と比較して低い状態」を指します。これは、絶対的な基準ではなく、あくまでその国や地域の平均的な生活水準との比較によって判断されます。

多くの先進国では、国内の所得分布に基づいて相対的貧困が定義されます。例えば、国民全体の所得を低い順に並べたとき、真ん中の人の所得(中央値)の半分(50%)に満たない世帯を相対的貧困とする、といった基準が用いられることがあります。この基準は国によって異なります。

相対的貧困の状態にある人々は、最低限の衣食住は満たされているかもしれませんが、社会の中で一般的な生活を送る上で必要なモノやサービス(例えば、教育機会、文化活動、地域との交流など)を手に入れることが難しくなります。その結果、社会から孤立したり、教育や仕事の機会を得にくくなったりするなど、社会参加や自己実現の可能性が制限されることがあります。相対的貧困は、経済的に豊かな国を含む多くの国で見られる問題です。

二つの貧困の違いと関係性

絶対的貧困と相対的貧困の最も大きな違いは、その基準にあります。

絶対的貧困は主に生存そのものの危機に関連しますが、相対的貧困は社会の中での不平等や機会の剥奪に関連することが多いです。

ただし、この二つは全く無関係ではありません。ある国で絶対的貧困が解消されたとしても、所得格差が大きければ相対的貧困の問題は残ります。また、相対的貧困の状態が続けば、教育や健康面での不利が蓄積し、世代を超えて貧困が再生産される可能性もあります。

なぜこの区別が重要か

絶対的貧困と相対的貧困を区別して理解することは、貧困問題に対するアプローチを考える上で非常に重要です。

例えば、食料支援や医療支援などは、絶対的貧困に直面している人々への緊急かつ直接的な支援策として重要です。一方、教育格差の是正や雇用の機会均等、社会保障制度の充実は、相対的貧困を減らすための取り組みとして効果が期待されます。

貧困問題に取り組む国際機関やNGO、各国の政府なども、それぞれの貧困の定義に基づいて現状分析を行い、適切な政策や支援プログラムを策定しています。

まとめ

「絶対的貧困」と「相対的貧困」は、貧困という一つの問題を異なる角度から捉えるための基本的な考え方です。絶対的貧困が生命維持に関わる最低限の基準を下回る状態であるのに対し、相対的貧困はその社会の一般的な水準と比較して低い状態を指します。

この二つの定義を理解することで、世界には生存そのものが脅かされている人々がいる一方で、経済的に豊かな国の中にも、社会から取り残され、機会を十分に得られない人々が存在することを認識できます。

貧困問題の多様性を理解し、効果的な解決策を考えるためには、これらの基本的な用語と概念を正確に把握することが重要です。この入門ページが、貧困問題への理解を深める一助となれば幸いです。